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行動で愛を証明しよう

出版倫理と性表現について女性読者の立場から考えています。性暴力・DV反対!もっと日本が結婚・子育てしやすい国になりますように。

森岡正博『感じない男』の誤りについて筑摩書房にお手紙を送りました

ツイッターのほうではお知らせしていますが、私が最初に交際した男性は森岡正博さんです。私は別れると元カレのことは忘れるタイプなので、忘れていました。今回恋愛工学の件で、やむを得ず約20年ぶりに連絡を取りました。

「著者に連絡するからには、最近の仕事をおさえておかないと」と思って、書棚に積読になっていた『感じない男』という文庫を読んで、びっくり仰天。

感じない男 (ちくま新書)

感じない男 (ちくま新書)

 

 

「私にはロリコンの気持ちが分かる。(中略)少女と性的にかかわったことはないし、かかわろうとしたこともない。」(P.110

 これは真っ赤な嘘です。一九九五年、私が十七歳のときに著者と交際を始めて、十八歳になってから深い関係になりました。この人は私のヴァージンの相手です。

第三章・四章で「妄想」として書かれている内容は、彼が実際に私にしたことです。今年二月に著者に連絡したところ、昔のことについて、「不適切な扱いをした。誤った女性観を押し付けた」とメールで謝られています。

この本は、とにかく、編集者がぜんぜん仕事をしていないんです。あんまりひどいので、出版社の筑摩書房に抗議のお手紙を送りました。

まず原則論なんですけど、社外から、本の内容についてまちがいの指摘があった場合、通常はまず著者に確認です。

その上で、著者が「いや、そんなことはない。原稿内容が正しい」と主張するのであれば、私に電話をして詳細を聴き、編集部の責任で事実関係を調査するのが筋です。

著者が「たしかに指摘通りです。あの原稿内容は間違っていました」と認めるのであれば、読者に対して、著者と編集部と連名で、内容の訂正と謝罪を行います。

それが編集責任なんです。そんなことすらできないんだったら、もう出版社なんかいらないんです。WEBで十分。何のために編集者が存在するのか。品質管理の為でしょうが。

担当編集者(男性)は「あの本は売れなかった」とかコボしていたんけど、売れないのは当然です。編集者がいい本を作ろうと思っていないからです。本当に何にも思わなかったんですか? 著者との打ち合わせはちゃんとやっているんでしょうか? 「おかしい」と思ったら、飲みに連れていって、「ほんとうに十代とヤったことない?」と問い詰めること。ボケっとしてるから、ガセつかまされるんです。なんで嘘を見抜けなかったのか、猛省してもらわないといけないです。 

動物的な直観力は女性のほうが優れています。「ワイシャツに口紅がついてるんだけど?」「なんでお父さん今日はシラフなの?」と、ピンと来ます。男性著者が書いたジェンダーの本には女性編集者をつけてください。男性著者が書いた原稿に男性編集者をアサインしたら、批判的な読みができないじゃないですか。社内で品質管理しないと。

私と森岡さんの昔の交際自体は、ロマンティックな話なんです。彼にとっては公になっても、そんなに汚点にならないと思います。宮台×鶉まどかさんや、岡田斗司夫×愛人たちのカップリングとちがって、男性側が美男子で私のほうが不美人です。私からアタックしているんです。森岡さんは『対話 生命・科学・未来』で、

対話 生命・科学・未来

対話 生命・科学・未来

 

 

恋愛がどんなものかは、自分で実際に恋愛してみないと絶対にわからない。恋愛をトータルにわからせるためには、その人に恋人を作ってあげるしかない。

と言っています。これを読んだ十七歳の処女の私は、「しめしめ」と思ったんです。当時の私は「恋愛を経験したことがない」ということが、ジレンマになっていました。コバルト文庫の新人賞に選ばれると百万円もらえるんですが、恋愛経験がないから書けない。もちろん濡れ場なんて書けない、処女だから。でも小説家をめざすなら、絶対濡れ場は書けるようにしないといけない。男の人がどんな甘い言葉を囁くのか、どんなふうにキスを与えるのか。経験してみないとわからない。

私は三十六歳の森岡さんにダメ元で「経験ないんです。教えてください」と誘惑したんです。てっきり「大人をからかうんじゃない」と怒られるかなと覚悟したんですけど、話を聞いてくれた。

いま思い返すと、ネギしょったカモが飛び込んでいったということになりますが、とはいってもすんなり深い仲になったわけではなかったです。かなり葛藤している様子は見受けられました。

なぜ『感じない男』でこんな大ウソを書いたのか。なぜこんな奇妙な本を書くほど、こじらせたのか。知りたくないですか? 気になりますよね?

今回「あの時、あなたに惹かれたから」と言われたのですが、この人が私に惹かれる理由はあるんです。よく似た別の男が、約二十年後に私のところにやってきているからです。私はそういうポジションのようです。その時は藤沢さんのことで頭がいっぱいだったので、「何言ってるの? 森岡さん、他の女にもいつも同じようなこと言ってるでしょう?」と思って相手にしませんでした。すれちがってしまった。

筑摩書房は、すれちがってしまったかつての恋人たちを再会させるべく、小粋なはからいをしてください。それが『王様のブランチ』の松田哲夫さんに象徴される、筑摩書房に期待される社会的役割です。筑摩書房岩波書店のいちばんのちがいは、懐の深さです。岩波はゴシップは扱いませんけど、筑摩さんはゴシップもヒューマン・インタレストの観点から肯定的に受け止める。「いろいろダメだけど、それも人生さ」という落語的な明るい懐の深さ、それが私たち愛書家にとってのいちばんの魅力だったんです。新刊ラインナップを拝見しましたが、買いたい本が一冊もない。学者と古い人ばっかり。新人を育てる余力自体が出版界自体にないのだと思いますが。

私は、いうなれば吉行淳之介における宮城まり子の立場であり、プレイボーイ文化人の愛人の暴露なんですから、筑摩の編集者だったら絶対面白がってくれるかと思いました。スキャンダルを潰すのではなく、ネタとして拾って、活かすことを考えてください。今回は初回のお手紙なので、私たちの昔の交際がどんなものだったかはあまり具体的に書けないのですが、いずれお話しします。おそらく、彼のほうが詳しく覚えていると思いますから、彼に会わせてください。話をしたら、「ああ、そういうこともあったね」と話が膨らむと思います。編集者なら、「彼女の側の言い分を本にまとめて、『感じない男』と彼女の本とペアで売っていこう」と考えないと。

岩波書店がいま不動産収入で喰っているという噂を小耳にはさんだんですが、「筑摩さんもかなり厳しいんだな」と感じました。面白いネタを拾う努力をしてください。ネタはタダです。もっと高感度人間になってください。

森岡さんと私の場合は、比較的恵まれたケースです。宮台や岡田斗司夫に泣かされた女の子たちはもっと気の毒です。森岡さんの場合は、すでに『感じない男』でここまでご自分の問題を自覚している。私と彼がここで踏ん張ることで、宮台や岡田斗司夫たちに傷つけられた女の子たちが救われると思います。

私が問題提起していることは、出版社にとっては、一種の不祥事だと思うんですけど、どうかタブーにしないでほしいんです。活字にする方向で前向きに検討して頂きたいんです。昔の太宰治みたいに、女と痴情沙汰をやって、それで飯を食っているという前近代的なライターがいたとして、そういう作家や学者の存在を全否定はしないですけど、出版社というのは共犯関係です。法人で、しかも相手の女の子は圧倒的な弱者です。自分の会社に近いところで弱者に対して不当な扱いがなされていて、それに見て見ぬふりをするとしたら、それは産業としてどうなのというふうに思います。文壇が存在した昭和の時代ではなく、二十一世紀なんです。他の産業はもっとコンプライアンス遵守やCSR(企業の社会的責任)に取り組んでいます。

商業出版ベースでペイするのは難しくても、ウェブでやるとか、なんらか表に出したいという熱意があります。まず出版業界の内部の人が考えなくてはいけないのではないですか。自分たちが何をやっているのか。このままでいいのか。

私から見ると、出版業界はたくさんある業界のうちの一つでしかない。もっと他の業界や社会との調和というのを考えて頂きたいのです。言葉にしないと、特に男性の言論人は、ご自分の横暴さに気が付かないと思います。

こんなかんじのお手紙を送りました。今日届くはずです。私の提案に、先方が乗ってくるかどうかはわからないですが、ピンチはチャンスなので、ぜひ良い方向に向けたいです。

このエントリーをご覧になった方、よかったら筑摩書房に「おもしろそうだから、筑摩さん、なんとかしてあげて」とメールしてください。できれば出版社にアレンジメントして頂いて、本人に直撃インタビューしたいです。「なんでこんな嘘ついたの?」って。知りたくないですか?

書けることと書けないことがあると思うのですが、できるだけ読者の皆様が納得できる形で、ご報告したいです。そうじゃないと、読者がかわいそうです。皆さんはお金を払ったのに騙されたのですから。

www.chikumashobo.co.jp